企業内保育所とは 立ち上げ・運営方法を解説
企業内保育所とは、基本的に企業で働いている従業員の子どもを預かるための保育所です。地域に住む子供を預かる地域枠もあり、地域貢献の一役も担っているでしょう。
一般的には企業がある建物の中や近隣に開設されます。
仕事のモチベーションが高い人でも、保育所に入所できずに企業を辞めるケースも数多くあるでしょう。企業内保育所には、女性の社会進出を後押しする、妊娠・出産での離職を防ぐなどの効果が期待されており、政府も企業内保育所を推し進めるなど今後も拡大していくと思われます。
企業内保育所を開設する場合には、無理のない範囲で計画することが大切です。メリットや費用、助成金について詳しく把握し、しっかり考えた上で企業内保育所を開設・運営するようにしましょう。
開設のメリット
企業内保育所を開設するメリットは、第一に子供の預け先に困っている従業員を助けることができます。
働くモチベーションの高い従業員が辞める必要がなくなるため、他の従業員にとっても嬉しい点です。
また仕事と子育ての両立がしやすくなる、企業のイメージがアップできるなどのメリットも多くあります。
もちろんデメリットもありますが、地域貢献なども踏まえれば、企業内保育所は魅力的な取り組みと言えるでしょう。
かかる費用
企業内保育所を開設するためには、700万から4000万円程度(※)の費用がかかるというデータがあります。新築なのか、リフォームなのかによって大きく工事費が変わってくるでしょう。
また保育人数によっても人件費が異なってくるので、まずは無理のない範囲で保育所を開設することが大切です。保育委託業者に依頼することで、保育士の派遣サービスによって人件費を抑えることができます。
また、条件が合えば助成金や補助金の利用も可能ですので、助成金申請も検討してみましょう。
助成金について
企業内保育所を開設する際に、条件を満たせば助成金を受け取ることができます。
企業の規模によって、受けることができる助成金の割合や限度額などが異なるため、大企業なのか、中小企業なのかが重要なポイントになるでしょう。
また通常保育なのか、延長保育や病児保育などによっても助成額は大きく変わってくるので注意してください。
助成金の申請は、必ずしも通る訳ではありません。
状況によっては申請が認められないケースもあります。
また助成金申請が認められたとしても、支給されるまでに時間を要することもあるので、費用面の負担も考慮した上で保育所開設を検討することが大切です。
求められる要件
法定基準
企業内でも保育所を運営するには、法定の基準をクリアしなければいけません。
法律で定められている基準は、以下の通りです。
- 地方自治体が定める「認可外保育施設」の設置基準を満たしている
- 子ども、子育て拠出金を負担していて、滞納がない事業主である
- 避難経路や消防設備などが消防法や条例の基準を満たしている
- 設置場所が地域の市街化調整区域に当たらない
- 現状の保育施設の変更が必要な場合、その変更が可能なこと
安全の確保が必要なため、基本的には認可外保育施設同等の基準をクリアしている必要があります。
保育従事者の人数と資格
保育従事者数にも要件があります。子供の年齢に合わせて必要な人数が異なるので、注意してください。
0歳児は3人につき1人、1~2歳児は、6人につき1人、3歳児は20人につき1人、4~5歳児は30人につき1人です。
この最低必要人数に、+1名が必要な人数。十分に子供に対して目を配れる人数が必要となります。
また、保育士には資格がありますが、企業内保育所では、従事者数の半数以上が保育士の有資格者でなければいけません。
設備の要件
満2歳以上の幼児を預かる場合で利用定員20名以上なら、設備にも規程があります。
- 保育室(遊戯室)
- 子ども用トイレ
- 調理室
- 屋外遊戯場
- 非常口
施設内に屋外遊戯場がない場合は、近隣の公園でも問題ありません。屋内だけではなく、屋外でも遊ばせて、健康的な成長を促せる施設であることが大切です。
施設の面積にも要件があります。
- 乳児室1.65㎡
- ほふく室3.3㎡
- 保育室・遊戯室1.98㎡
- 屋外遊戯場3.3㎡
適切な広さの施設を用意しましょう。
必要な検討事項と設置の流れ
設置方法を検討する
企業主導型保育所の設置方法には、「単独設置型」「共同設置型」「保育事業者設置型」など種類があります。単独設置型は、自社従業員専用の保育施設です。共同設置型は、他の企業と共同利用すること。保育事業者設置型は、保育事業者が設置した施設を企業が利用する方法です。社員への福利厚生として保育施設を運営する場合でも、必ずしも自社運営である必要はありません。自社運営するかどうかが最初に検討すべき事項といえるでしょう。
運営方法を検討する
設置方法と同様の検討事項ですが、自社直営で運営するか、保育事業者に委託するかを決めてください。
利用者ニーズを知る
子供の年齢や時間帯、曜日、場所、人数など、利用者のニーズを調査します。ニーズに合わないと、せっかく保育施設を運営しても利用できないかもしれません。ニーズを知ることで、本当に必要な保育施設となり、従業員が仕事に集中できます。
設置場所を検討する
自社ビルの中や自社施設の一部、別の場所に専用で設置するなど、保育施設の設置場所を検討します。従業員の交通の利便性に配慮が必要です。子育てと仕事を無理なく両立できる場所を検討してください。
設備の広さ、保育所定員を検討する
預かる子供の人数がおおよそ把握できたら、設備の広さと保育所定員を決めます。人数によって必要な広さがあるので、おのずと導き出されるでしょう。広い方がいいような気もしますが、あまりに広すぎて従業員の目が届かないと、かえっていけません。適切な広さを検討してください。
自治体へ相談する
運営する保育施設の概要が定まったら、自治体へ相談してください。関連する法律には、建築基準法、消防法、食品衛生法、各自治体の条例などがあります。企業ではすべてを把握できないでしょうから、自治体に確認してください。
企業内保育所の単独設置
企業内保育所の単独設置とは、ある企業が単独で設置する保育所を指します。設置後、その企業のみが利用できる「単独利用」に加え、他の企業の社員も利用を可能とする「共同利用」を選ぶこともできます。基本的に自社で立ち上げから利用者・保育士の募集までを行うため、コストなどの負担がかかる可能性がありますが、自社のニーズを反映した保育所にすることができ、福利厚生の一環としてイメージの向上に役立てられます。
企業内保育所の共同設置
企業内保育所の共同設置は、複数の企業が共同で保育所を設置する方式です。設置企業の社員は保育所を利用することが可能で、地域枠と呼ばれる外部の子どものための枠も設けられるため、地域社会への貢献や企業のイメージアップにも役立ちます。設置の際は運営を直営にするか委託にするか、連携契約書の内容の確認と検討などが必要であり、外部の保育事業者への委託や保育所の設置場所によってはコストが課題となる可能性があります。
企業内保育所の直営
企業内保育所には「直営」と「委託」の2種類がありますが、直営とは自社のみで保育所の設立・運営を行う方法のことです。直営には委託料などのコストがかからないこと、保育所の方針を自由に決められることなどのメリットがありますが、設立・運営の負担が大きいなどのデメリットもあります。
またもし事故が起きた場合、企業のイメージが悪くなってしまう恐れがあることにも注意が必要です。
企業内保育所の委託
企業内保育所の「委託」とは、自社のみで運営する「直営」とは違い、外部の企業に保育所の開設や運営を委託する方法のことです。委託料を支払わなければならずコストがかかりますが、実績の豊富な委託先であれば、保育所運営のノウハウを持っていて、質の高い保育サービスを実現させやすくなるでしょう。
また設立・運営のための手間もかかりません。ただ保育所の方針は委託先のものが採用されるので、自由に決めることは難しくなります。
企業内保育所の給食
企業内保育所には給食を提供する義務があります。利用定員が20人以上の場合は調理室を、利用定員が19人以下の場合には調理設備を設置しなくてはいけません。満3歳以上の児童に対する給食の提供については、保育施設外で調理して搬入する「外部搬入」という方法をとることも可能です。満2歳以下の児童に対する食事の提供についても、定められている外部施設から搬入することができます。
給食を提供するための要件も定められているため、安全性にも注意して委託先を選定しなくてはいけません。
事業所内保育事業のA型とB型の違い
事業所内保育事業とは、事業所内に保育施設を設置し、企業が主体となって運営する保育施設のことです。利用定員数によってA型とB型に分類され、それぞれ認可基準が異なります。小規模型事業所内保育のA型・B型の違いは職員の資格です。A型は職員資格が保育士のみに限定されているのが大きな特徴となっています。
A型とB型の違いを理解し、事業所内保育事業設立の参考にしてください。
企業内保育所の保育料
企業内保育所には、企業主導型保育事業と事業所内保育事業の2種類があります。企業内保育所は、一般の保育所と同じように令和元年から始まった保育料の無償化の対象となっています。しかし、企業主導型保育事業と事業所内保育事業では保育対象年齢が異なるため、保育される子どもの年齢によって利用者負担額にも違いがあります。企業主導型保育事業と事業所内保育事業の概要や保育料の違いについて解説しているので参考にしてください。
企業内保育所の定員
企業内保育所は、待機児童の解消を目的のひとつとしているため定員に対する決まりが定められています。企業内保育所の定員には、従業員の子どもを保育する従業員枠と地域の子どもを受け入れる地域枠があります。企業内保育所の従業員枠と地域枠の定員の決め方は、企業主導型保育事業か事業所内保育事業によって違います。
企業内保育所の定員について、企業主導型保育事業と事業所内保育事業に分けて解説しているので参考にしてください。
企業主導型保育所には施設長の設置が必須
企業主導型保育所には、必ず施設長(園長)を置くことが必須となっています。施設長になるために求められている資格はありませんが、児童福祉に携わった経験、保育所の社会的役割を理解し、責任を持って運営できる人材であることが望ましいです。
企業内保育所の単独設置・共同利用とは?
企業内保育所の単独設置とは、1つの企業が保育所を設置し、自社社員の子どもだけを受け入れるものです。一方共同利用は複数企業が保育所の設置に関わります。共同利用の場合は保育所を利用する企業間で、費用負担や定員枠などを明確にする必要があります。
企業主導型保育は公務員でも利用できる?
働く従業員のために子供を預かる企業主導型保育施設でも、地域枠が設けられている場合公務員でも利用できることがあります。さらに、最近では行政として事業所内保育施設を設けている場合があり、さらに利用がしやすくなりつつあります。
企業主導型保育の設備基準
従業員や地域の方の大切な子供を預かる企業主導型保育所は、助成金などの支援が受けられる一方で決められた基準に従って設置する必要があります。安全・安心な保育環境を提供することで、従業員満足度の向上が見込まれるでしょう。
女性の働き方、活躍を支える「企業内保育所」
女性が子育てを理由に仕事を離れる方は一定数あり、「企業内保育所」の導入によって働きやすい環境を整えることで、解決できる課題や悩みも少なくないでしょう。
「企業内保育所」の安全対策、予防
子どもの親が安心して働くための環境を提供する「企業内保育所」において重要な安全対策や予防について紹介・解説します。
企業内保育所の立地
企業内保育所の多くが、企業の敷地内に設置されています。交通量の多いエリアであっても設置することは可能ですが、安全対策を十分に行うことが大切です。施錠をしっかりと行うだけでなく、災害時の避難対策も講じておきましょう。たとえば、滑り台設置などの方法もあります。また、企業と同じ敷地にあるからこそ、来客者も多いので不審者対策は欠かせません。シンプルな内装にするなどの工夫を施してください。専門家の意見を聞きながら、立地や設備などを考えると良いでしょう。
企業内保育所の健康管理
企業内保育所において、園児の健康管理や感染症対策などは非常に重要な役割のひとつです。健康管理を行うためには体温や顔色、皮膚の状態などを観察し、保護者からもヒアリングを実施しましょう。少しでも異変があれば保護者と情報を共有することも大切です。定期的に健康診断や歯科検診を行う必要もあります。感染症を発見したら、早い段階で医師の指示に従いましょう。また、乳幼児突然死症候群対策のためにも、睡眠時の顔色や呼吸をこまめに確認してください。
企業内保育所を設置するならニーズ調査は必須
機業所内保育所を設置したいとの理念はとても素晴らしいものですが、うまく運営させるためにはニーズ調査が必須です。なぜなら、ニーズがなければ保育所を設置したところで誰も利用しませんし、従業員の利用が50%以上必要なので、せっかくの保育所が無駄になってしまう可能性があります。
企業主導型保育事業と事業所内保育事業の違いが知りたい
企業主導型保育事業と事業所内保育事業は、それぞれ異なるものです。いずれも政府が主導している事業なので同じものだと思っている方も多いのですが、それぞれ微妙に異なるものです。企業内に保育所をと考えている場合、企業主導型保育事業か事業所内保育事業のいずれかになりますので、それぞれの特徴や両者の違いを正しく把握し、どちらが自社にマッチした保育所なのかを考える必要があります。
企業主導型保育事業と事業所内保育事業の違いが知りたいを詳しく
企業内保育所を委託する場合の選び方
企業内保育所を外部に委託する場合、最初に開設と運営にかかるコストを調べておきましょう。おおよその相場を元に予算を組み、その範囲内で提案してくれる委託会社を選ぶことが求められます。事前に見積を取っておくとよいでしょう。
企業内保育所を外部へ委託すれば、専門的な業務は一任することが可能。クレームなどのトラブルにも対応してもらえます。また、クオリティの高い保育が担保されるほか、自社運営に比べてコストを削減できる可能性があります。
企業内保育で夜間対応はできる?
働く親にとって、多くのメリットをもたらしてくれる夜間対応。企業内保育においても、夜間対応させることは可能です。また、場合によっては延長保育も対応させられるため、一般の保育園とは違った細かなサービスも提供できるでしょう。
ただし、企業内保育で夜間対応導入は入念な検討が求められます。導入によってどのようなメリットをもたらすのか、慎重に判断しましょう。特に費用対効果は重要ですので、コストや社員の生産性への影響をシミュレーションする必要があります。
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