企業主導型保育事業と事業所内保育事業の違いが知りたい
企業主導型保育事業と事業所内保育事業は、ともすると同じものだと思っている人も多いかもしれません。確かに何となく似たイメージではありますが、両者は別物です。そこで企業主導型保育事業と事業所内保育事業の違いについてをまとめてみました。
認可の有無の違いがある
企業主導型保育事業と事業所内保育事業の最も大きな違いが認可です。
企業主導型保育事業は認可外保育施設となっていますが、事業所内保育事業は国の基準を満たした認可保育所にカテゴリーされています。そのため、事業所内保育事業を開設するにあたっては市区町村から認可を受ける必要があります。
このような認可の違いが根底にあることを理解しておくと、両者の違いを把握しやすいです。
保育士の配置基準が違う
企業主導型保育事業と事業所内保育事業とでは、保育士の配置基準が異なります。
まずは企業主導型保育事業です。
- 0歳児:子ども3人に対して保育士1人
- 1・2歳児:子ども6人に対して保育士1人
- 3歳児:子ども20人に対して保育士1人
- 4・5歳児:子ども30人に対して保育士1人
上記合計数に1人以上の職員を配置しなければなりません。
また、事業所内における保育従事者の半数以上が保育士資格を有することも条件となっています。
一方の事業所内保育事業の配置基準は下記となっています。
- 子どもの定員20人以上:認可保育所の基準
- 子どもの定員19人以下小規模保育事業A・B型の基準
上記に加えて1名職員を配置しなければならないのですが、保育士ではなく保健師や看護師、准看護師でも良い特例が用意されています。
参照:内閣府_子ども・子育て支援新制度ハンドブック(https://www8.cao.go.jp/shoushi/shinseido/faq/pdf/jigyousya/handbook.pdf)
受け入れ可能な子どもの対象年齢が違う
企業主導型保育事業の場合、子どもの対象年齢は定められていません。一方、事業所内保育事業は原則として0歳児から2歳児までです。そのため、3歳以上の子供を預けられるのは企業主導型保育事業のみとなります。
助成金の金額が違う
企業主導型保育事業、事業所内保育事業いずれも助成金を受け取ることができる点は同じですが、助成制度・金額に違いがあります。
企業主導型保育事業の場合、設置費・運営費を合わせた助成金が、必要費用の約4分の3支給されます。
一方事業所内保育事業では施設設置費が3分の1~3分の2まで、運営費1人あたり年額34万円~45万円。または運営費用から施設定員最大10名に運営月数×月額5,000円か10,000円を算出し、いずれか低い額の助成金が出ます。
保育料無償化の適用範囲が違う
3歳から5歳までの子供を対象とした保育料無償化。
企業主導型保育事業の場合、3歳から5歳までの子供に加え、住民税非課税世帯の0歳から2歳の子供は標準的な施設利用料が無償化となります。
一方の事業所内保育事業は基本的に無償化の対象となっています。ただし、認可外保育施設に関しては市区町村から保育の必要性の認定を受けている必要があります。
認可外保育施設に関しては3歳から5歳の子どもは月額37,000円、0歳から2歳までの住民税非課税世帯の子どもは月額42,000円まで無償化されます。
このように、企業主導型保育事業、事業所内保育事業共に「保育料無償化」の恩恵を受けることはできるのですが、条件等が微妙に異なる点には注意が必要です。
参照:厚生労働省_幼児教育・保育の無償化概要(https://www8.cao.go.jp/shoushi/shinseido/musyouka/gaiyou.html)
地域枠の設定条件が違う
地域枠とは、従業員の子どもだけではなく、地域の子どもにも保育サービスを提供することで待機児童減少・解消を目指したものですが、この点も両者には違いがあります。
企業主導型保育事業の場合、人数が埋まらない場合は定員の2分の1まで地域枠を設定することができます。つまり、定員が埋まっている場合、地域枠を確保する必要はありません。
一方、事業所内保育事業は地域の子どもへの開放が義務付けられており、保育施設の定員によって定員数が定められています。
- 11~15名:4名
- 21~25名:6名
- 31~40名:10名
こちらは義務となっていますので、必ず設定しなければなりません。
そのため、場合によっては事業所内のスタッフの子どもを預けることが難しいケースも出てくるでしょう。
参照:内閣府_子ども・子育て支援新制度ハンドブック(https://www8.cao.go.jp/shoushi/shinseido/faq/pdf/jigyousya/handbook.pdf)
企業主導型保育事業の特徴
企業主導型保育事業と事業所内保育事業の違いをお伝えしましたが、それぞれの特徴を把握しておくことも大切です。
企業主導型保育事業とは、2016年度から始まった制度で内閣府より企業向けに助成する制度で「企業主導型保育園」と呼ばれることもあります。
ちなみに単独設置だけではなく、複数の企業での共同設置も可能な点や運営を保育事業者に委託することもできる制度となっています。
対象の子ども
保育の対象となるのは企業で働く従業員の子どもで、年齢に制限はありません。
創設の目的
夜間や短時間、休日のみといった従業員の多様な働き方に対応すべく、企業や従業員を支援するための制度です。
待機児童対策の一環で、労働者が安心して働ける環境構築、さらには子どもの保育を目的としたものです。
事業所内保育事業の特徴
事業所内保育事業は2015年に施行された地域型保育事業に分類される事業です。
事業所内や有効スペースに保育施設を設置する等、企業主体での運営が特徴です。
対象の子供
0歳から2歳の子どもが対象となっています。地域枠の設定が義務付けられていることから、事業所の子どもだけではなく、保育を必要とする地域住民の子どもも対象となっています。
創設の目的
育児と仕事の両立のために、就業中の子どもを預けられる場所を作ること、待機児童の解消を目的としたものです。お伝えしたように、事業所内保育事業には地域枠が義務付けられていることから、企業の労働者だけを対象にしたものではなく、地域社会の待機児童解消も目的に含まれています。
まとめ
企業主導型保育事業と事業所内保育事業の違いについてをお伝えしました。
それぞれが異なるものであることが分かっていただけたかと思いますが、大切なことは企業に合った事業を選択することです。自社向けのものか、あるいは地域にも開放するかが大きな違いとなりますので、どちらが自社にマッチしたスタイルなのかを踏まえて選択しましょう。